虐殺器官、観てきました。伊藤計劃プロジェクト最後の映画感想。

伊藤計劃プロジェクト。

ということで、伊藤計劃が作った3つの小説作品が映画化しております。

死者の帝国、ハーモニー。そして、虐殺器官。今回は虐殺器官を見てきました。

人間が本来持つ、虐殺の本能。虐殺器官

映画.comより画像を引用

絵が、むちゃくちゃかっこいいですね。

今回の映画は、小説を知っている方からすると全然中身が違う。と言うようなレビューもありました。しかし、ぼくは観ていないので本当にひとつの作品として楽しめました。

 

ということで、小説を読んでない男の感想になります。

なので、そもそもこの映画は大虐殺が起こるようなバトル映画になるんじゃないかなと想像していました。

 

謎の男、虐殺にはジョン・ポールが暗躍している

突如、人間が凶暴性を増し虐殺を行うようになる。

しかし、狂って、銃を乱射するような人が出てくる。

ということはなく、平和を目指していた人間が突如に暴力性に目覚め、紛争を起こす。

なかなか知的に虐殺を起こしています。虐殺、というと少し語弊がありますが、紛争を激化させ周囲の地域から平和という単語を奪い取ります。

 

そういった紛争の裏には「ジョン・ポール」という男が裏で暗躍しているということがわかります。

 

主人公、クラヴィス・シェパード大尉がその男の確保を命じられ物語が動き出す。

 

人間には元来から備わる虐殺器官を持っている

シェパード大尉はジョン・ポールを追う中、数度の紛争地機で戦闘を行います。

 

その途中途中でジョン・ポールと交差します。

そこで信じられない事実、人間には元来から備わった器官、虐殺の本能を刺激する虐殺器官が存在するという事を知る

 

彼は、その事実と向き合いながら、真実を知るために何度もジョン・ポールを追いかけ、様々な地域へと飛んでいく。

そこで行われる紛争、虐殺は彼に一体どんな変化を与えるのか。

主人公の感情の変化、思想の経過などにも注目するとより楽しめます。

 

まるで一冊の小説を濃縮したようなセリフ量。映像のクオリティも高く、物語としても面白かった。

映画はとてもおもしろかったです。考えさせられることも多かった。

 

虐殺、という極端なことにはなかなかなりえません。

が、人の言葉を聞き「こうしたい」と瞬間的に思うことはよくあるでしょう。

育った環境によっては、考え方は変わるし全く違う行動を起こす。

 

人間は「知りたいことしか知らない」し「知りたくないことは無意識に避ける」のだ。

全てを知ろうとしながら生きる人間は稀で、やりたいことをやらない人も多い。

 

やりたい

 

これを実践できている人はどれくらい要るだろう。お金と時間がかかる物事ほどやれてないことは多いだろう。

そのやりたいに対して計り知れない「知りたくないこと」を無意識に避けているからかもしれない。

 

メリットばかりに光をあてて、デメリットを見ないのと同じだろう。

もしくは、そのデメリットを知り、無意識に避けているのかもしれない。ある意味反射と同じ。

 

「やりたいなら何故やらない?」

とやれている人は言う。その人達は無意識的に起こる反射をコントロールし、時にはやる気や勢いなどでデメリットをねじ伏せれる人だ。

 

いわゆる「飛び込む勇気」と言われるそれは、つまりそういうことなんだろうな。

とこの映画を見て思った。

 

とにかく、色々なことを考える切っ掛けにもなったので良かったです。

 

 

ここから先はネタバレを含みますので、ご注意ください。

 

虐殺器官の深いネタ ※この先ネタバレを含む

 

映画そのものの感想と言うより、設定に対してのちょっとした考察になります。

 

主人公自身、脳の感覚にマスキングが加えられた戦闘マシーン

主人公はかなり一般的で、普通の感性を持つ成人男性。ではない。

 

映画の序盤でわかることだが、彼は暗殺や戦闘という分野において超エキスパート。

また、様々な文化などに精通する文化人で頭のキレや感性も人一倍。

 

しかし、兵士として完璧になるために、「調整」というなのマインドコントロールを行う。

脳に伝わる痛みを制御し、人を殺すということに関しての感性にフィルターを掛ける。

 

目的のために、仕方ないということを強く許容する。

彼はよく「仕事のため」ということ言います。

 

しかし、その強い理由を盾に深いことを考えられないようにフィルタリングされているんだとジョンは問いかけます。

まさに「知りたくないものを無意識に避けている」ということ。

 

特に彼の仕事は「人の命を奪う」ということが中心的。

仮に良心と言うものがあれば「奪った人生」「起こり得た幸せ」「自身の行動の正当性」など、様々なことを考えてしまうだろう。

そこに気づいてしまえば迷いが生まれ、行動が鈍る。

 

仕事のため

 

一体、彼は何のために動くのか

 

あいのため?いきるため?

 

虐殺の本能を刺激する、太古から存在する言葉の力

虐殺の本能。

 

虐殺器官とはなんだ?

なぜ、人間は虐殺を起こすのか?

 

その一つの回答が虐殺器官にはありました。

その回答はある種太古から備わっている人間の本能であり、三大欲求のように素直な行動。

むしろ、ゾンビ映画とかにも通じるような設定のような内容でした。

このあたりは是非映画を見てほしいところです。

 

 

この映画の話は人間心理に基づいてもろもろ考えられています。

あぁ、なるほど。と納得するようなことがたくさんあります。

 

この映画はその本能を「虐殺」や「戦闘」というわかりやすい表現で映像化されています。

しかし、それは全て置き換えて考えることができます。

 

わかりやすいところだと「お金を稼ぐこと」は現代人における「戦闘」みたいなところです。

一般的でとても普遍的な行動を、どれくらい考えながらできているだろう?

 

シェパード大尉が特別ではないのだろう。僕達だって、シェパード大尉のような存在なんだなと思う。

 

 

人間は「知りたいことしか知らない」のだ。

ジョン・ポールは虐殺を自身の目的を達するための手段とした。

 

ジョンはひょんなことから虐殺へ引き起こす「力」を見つけた。

それを使うことで、彼は彼の平和を守ろうとしたのだ。

 

 

よく「力は正しく使わないといけない。」と言われます。

その理由は様々で、身を滅ぼすから、人を不幸にするから、目的を達成できなくなるから

などなど様々作品言われます。

 

結果として、ジョンはその過ぎたる力を使わざるを得ない考えと至り、力を奮ったことでシェパード大尉と敵対することになった。

 

劇中でジョンは「自分のしたことに後悔はない」と言います。

ぼくはその姿を見て到底幸せとは思わなかった。

 

しかし改めてブログを書きながら考えていると、それでも行動を起こしていたジョンは満足だったのかな。

幸せではないが、その生は全うされたのか。

 

そう思ってしまうとぼく自身も今の生が全うできているんだか、できていないんだか。

 

 

感受性が揺さぶられるような映画は深く考えさせられますね。

 

とにかく、面白かったので是非どうぞ。

ではまた。